★三味線弾きの―じじ様
私の父は文楽の三味線弾きです。
文楽ってご存知ですか? 人形浄瑠璃というやつです。
ちなみに叔父(父の義兄)は人形遣い。
この写真は、出番前に、三味線の調子を合わせて
いるところ。
私にとっては子供の頃から聞きなれている、
迫力のある太棹の音ですが、
たまにしか聴かない娘たちにとってはまだまだ
違和感が。
「うるさいっ!」「じじ様、あっちでやってぇ〜」
失礼です! オモチャ、買ってもらいたくないんですか?
出番前になると、父よりも若い大夫さんや三味線弾きの方々が、
楽屋に挨拶に来られます。
「おはようございます。」「よろしくお願いいたします。」……
後輩から先輩へのご挨拶。どこの芸能界でも同じですねぇ。
その度に「はい、おはよう。」「はい、よろしく。」と答える父の隣で、
同じように「はい、おはよう。」「はい、よろしく。」と言う娘1。
失礼です! 終演後、お蕎麦食べに連れて行ってもらいたくないんですか?
じじ様の舞台を観に客席へ。
「身内の者です。この段(場面)だけ観させて下さい。」と、
劇場案内のお姉さんに頼み、一番後列の空いている席へ。
ここからがいつも難題です。
私は子供の頃、身動きひとつせず父の舞台を観劇していました。
だから小学生にもなると、三味線の音色の違いがわかったもんです。
“あの人のは音に艶がある”とか“響きが深いなぁ〜”とか。
うちのお嬢は……まったくダメですねぇ。
幕が上がり、じじ様の姿を見つけると「じじさまぁ〜!」。
あわてて口をふさぐ私。でももう遅いです。
じろっと振り返る人に頭を下げ。冷や汗もんです。
人形が出てくると少しは見入っていますが、しばらくすると、
ゴソゴソ、ざわざわ。そして「まだぁ〜?」。
集中力がないというか、持続力がないというか、落ち着きがないというか……
毎回、客席からロビーに出るとケンカです。
「もう二度と、じじ様のベンベン(三味線のこと)、連れてきてあげないからねっ!」
せっかくこーゆう家系に生まれたのだから、何かを吸収してもらいたいという
母の身勝手な願いは、音を立てて崩れ去ってしまいます。
宝塚観劇も、あと5年は無理でしょう。
でもおじいちゃんがこうゆう職種だと、特権もあります。
舞台裏を見せてもらえるとか、人形を触らせてもらえるとか。
今日も叔父の楽屋で、娘1は人形を持たせてもらいました。
「重い。もういい。」
し、失礼な――っ!
叔父が私に「また、痩せたのと違うか?」
私「叔父さん、私も、もう年……。」
父が「いや、生活やつれ……。」
そんな風に思われるのなら、夏休みにカワユイ孫を預かってクダサイ。
間違いなくあなたは倒れるでしょうが。
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